なぜその文章は読まれないのか? デザイン的観点から考えてみる。

せっかく書いた文章が読み飛ばされたり、そもそも目を引く事ができなかったりする理由はなぜでしょうか?
内容や文章力、構成力にも原因はありますが、ここでは、デザイン的観点から文字組に注目して、私の考えをお伝えしたいと思います。

文字組に気を回すだけで、格段に読まれやすくなる。

昨今は様々な編集ソフトが出回っていることもあり、デザイナーでなくても、お知らせや企画書など、相手に何かを伝えるために媒体を作成する機会は多いものです。
吟味した内容を分かりやすく伝えるために、写真やイラストを組み入れたり、奇抜なデザインを採用するなど、色々工夫を重ねているのに、読まれない・・・。伝わらない・・・。
その原因は「文字組」にあるかもしれません。

誰かにメッセージを伝えるために、相手にとって読みやすく作成することは、とても重要です。
読み易さは、読まれ易さに繋がります。

内容の本質、対象となる相手、読まれる状況などを考え、ぜひ、文字組を再検討してみてください。


文字組の3つのポイント

1. 次を読みたくなる配置であること。

2. 理解しやすいこと。

3. ストレス無く読めること。


この3つのポイントを実現させるために、どのようなことに気を配ったらよいでしょうか。

 

次を読みたくなる配置とは

タイトルは見出しのために、見出しは本文のためにある。ということを意識して配置しましょう。

タイトルや見出しは、本当に伝えたい本文のためにあります。ですから「目を引く」ことができなければ、魅力的なコピーも無駄になってしまいます。文字サイズは目で見てはっきりと区別できるよう、強弱をつけるべきです。

そして、本文は、理解しやすく、ストレス無く読んでもらえるために、行長・行間は適度にとり、文字間に注意を払い、余白を多めに取ることが大切になります。

 

読みやすい行長とは。基準を知ろう。

行の長さは大切なポイントです。
適切な行の長さは、24字から40字程度で、長くても48字程度までにすると良いと言われています。最近の研究では、20~25字が快適に読める、という実験結果が出ているようです。
私も日々デザインをする中で、この文字数が読みやすいと実感しています。

また、多くの人に読まれる新聞や書籍などの印刷物は、安定した品質を保つため、JISにガイドラインに沿った文字組が採用されています。大いに参考になるので、JISガイドラインを確認してみるのもよいでしょう。
また、貴方の手元にある媒体が、一行何文字で作成されているか確認するのも基準を知る有効な手段です。


身の回りの媒体の行長さ

  • 1行 12文字:新聞で使われる行数
  • 1行 20文字:雑誌などで3〜4段組で使われる。
  • 1行 35〜45文字:四六版の書籍や文庫、新書などで使われる。

頻繁な行替えは、眼球を左右上下に大きく動かすことになるため、ストレスになります。

このことから、新聞で使われる行数が、1行12文字というのは、ややストレスがかかっていると言えます。
しかし、「ややストレスがかかるが読める」わけですから、スペースやデザインの都合上、一行幅をあまり持たせられない場合は、この文字数が限界数だと基準付けることができるでしょう。

高齢者向けの媒体のため文字を大きく配置したいというご希望を受けることがあります。

しかし、文字サイズを大きくすることによって、1行に入る文字数が減り、改行が増え、読みにくいのであれば、若干文字が小さくても適切な行の長さを維持するべきだと私は考えています。

また、行替えが少なくても、行が長過ぎると、目や脳に負担がかかり、非常に読みにくくなるため、控えるべきです。
クレジットや協賛情報、補足情報などであれば、それほど気にする必要はありませんが、本文で45文字を超える事に対して、あまりにのも無関心な媒体を非常によく見かけます。

読みにくいだけでだく、美しさにも影響があるので、一度見直されることをお勧めします。

文字配置は、少しの違いで、読み易くなったり、読み難読くくなったります。
基準を知ることは大切です。基準が分かれば、読みやすさの追求だけでなく、あえてゴチャゴチャに配置することで、賑やかさを表現できたり、行間を空けることで、静かな雰囲気をかもしだしたりすることもできます。

基本を知っているか、知らないか?で、崩しているのか?崩れているか?の違いにも繋がります。

皆さんの身の回りの文字組も少し気にしてみてください。おもしろい発見があるかもしれません。

 

読みやすい行間・文字間・改行位置とは。基準を知ろう。

行長だけでなく、行間・文字間・改行位置も、読みやすさのために重要です。

・行間
一般的に行間は文字の大きさの1/2から3/4程度が読みやすさの基準です。
一行が長い場合はやや広めに、短い場合はやや狭くする傾向があります。
余白を十分とることで、読みやすさの他に、高級な雰囲気をかもし出す効果が期待できます。案内状などフォーマルな書類はやや広めに行間を取ってもよいでしょう。

・文字間
文字は書体設計者によって、どのように文字並んでもバランスよくみえるよう、文字の太さや、大きさ、黒さ、重心、空きなど、様々なことに気を使って、検査を繰り返しながら作られています。
このため、字間を空けたり、詰めたりすることは、専門家が吟味に吟味を重ねたバランスを崩しかねません。タイトルや見出しで、ゆっくり読ませたいなど、特別な理由が有る場合を除き、単にスペースが余っているから。なんとなくキレイにみえるからなど、安易な理由で文字間の調整は行なわない方が賢明でしょう。

ただし、日本語特有の書体設計ルールのため、逆に詰めるべき個所もあります。約物(括弧や句読点など)や、ひらがな、カタカタは、漢字と異なる形状であり、小さく設計されているため、詰めた方が読みやすいことがよくあります。
このような読みにくい個所を個別に余白を調整できれば、より高品質な文字組を作ることができます。
(たとえ、それができなくても、そのように考えられているこということさえ意識できれば、読みやすさに対する理解も深まるでしょう。)

・改行位置
単語をまたいでの改行は読みにくいので控えましょう。
また、読みやすさを追求するあまり、文章をまたがないよう気にされる方もいます。この気遣いはとても大切なので、好感を持っているのですが、行き過ぎると逆に読みにくくなるので要注意です。読みやすい改行のため、バランスが良いのは、文節での改行だと私は考えています。

 

日本語と欧文の文字サイズの違い

日本語の媒体では、和文と欧文が混在するものが多くあります。このため、和文書体には基本的に欧文書体が含まれています。しかし、デザイン上、欧文を別の書体に置き換える場合があります。
読みやすく和文と欧文を配置するには、最適な欧文書体を選択し、サイズや位置の調整をしなくてはなりません。プロの仕事としては、細かな微調整を行なうべきですが、簡単な書類であれば、欧文は和文に比べて一回り小さい傾向にあるので、欧文のサイズを一回り大きくするだけで、出来映えは随分すっきりするでしょう。
本文中全ての書体を調整することが難しければ、タイトルや見出し部分だけでも調整されてはいかがでしょうか。

和文と欧文の配置は、対応するデザイナーの美的感覚によって出来映えが左右されがちです。自分の感覚とあったデザイナーを見つけることができれば、とてもラッキーだと思いますよ。

 

海外デザイナー作成のテンプレートを使用する際のちょっぴりアドバイス

最近はWordPressテーマやWEBページデザインなどで、素敵なテンプレートが出回っています。特に海外のデザイナーによって作られたものは、魅力的なものが多くあります。
しかし、実際に文字を配置してみると「あれ? バランスが悪い。読みにくい。」と思うことが、しばしばあるはずです。
原因は、日本語とアルファベットの文字の成り立ちの違いにあります。

テンプレートをそのまま利用すると、日本語書体は、基本的に英語より大きめに作られているので、なんとなく間が抜けた感じみ見えたり、読みにくくなったりしているのです。

文字組を調整する必要があることを知っていれば、海外の素敵なテンプレートの魅力をもっと活かせるはずです。

 

文字配置は、媒体を作成する上で、地味ではありますが、最も重要なことです。
情報さえ入っていればよいという考えは、相手にとって不親切な上に、せっかくの有益な情報を見逃される可能性があります。

また、媒体を作成する際、目先の奇抜さや目新しさ、美しさを重要視しがちですが、本来の目的は伝えることであるということを忘れずにいたいものです。

※参考文献:モリサワ「文字は語る」

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このブログの執筆者:AKIKO SANO
筑波大学芸術専門学群グラフィックデザイン専攻2000年卒/印刷会社勤務の後、製茶メーカー商品開発及び広報を担当/大手自動車メーカー公式サイトディレクターとして主に世界中で展開されるCSR・環境・社会貢献活動をWEBで紹介する業務に従事/2006年より独立。2017年4月より英文広告制作に力を入れるべく英告堂を立ち上げ、サービス開始。

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